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よく「聴く」ことはよき友となるための必須条件

 


 カウンセリングの基本は、よく相手の話を聞くことにあると言われている。しかし、これがなかなかむずかしい。学校の先 生、看護婦、ケースワーカー、医者、弁護士、牧師など、世の指導的立場にある人ほど相手の話を聞くのが下手である という印象を私は強くもっている。彼らはどうしても、人の話を聞く前に教えようとする。心を空っぽにして、ひたすら相手の 苦しみや悩み、愚痴などをじっくり、聞くことは忍耐のいる仕事である。そのためには自分を無にしなければならないから だ。ところが冒頭に挙げた専門家といわれる人々の頭には、専門知識や経験がいっぱい詰まっている。だから、援助を求 める人が訪れると、洪水のようにその知識や経験がが流れ出すのだと思う。しかし「聞くには早く、語るにはおそく」(ヤコブ 一・十九、新改訳)あれと聖書は語っている。

 よく聞くことは人生における大きな知恵であり、よき友となるための必須条件の一つだと言える。厳密には「聞く」だけでは 不十分で、「聴く」(一生懸命聞く)ことが大切であると言われている。

 それでは、なぜ援助を求めている人は自分の話をよく聞いてもらえたと思うと、心が癒されるのだろうか。まず、よく聞いて もらうと、自分という存在を相手にありのまま認められたと感じるからだ。しかも、自分は尊重されている、信頼されているの だという感じをもつ。そして、徐々に、心の扉を開くようになる。

 いったん心を開くと、あるがままの自分と向き合うことができるようになる。その結果、自分に対する新たな気づきが生じ る。人の前で心を開かない自分、うまく表現できない自分から解放されるのである。自分のことをありのまま受け入れること ができるようになると、他人に対しても、ありのまま見ようとするゆとりができる。

 その結果、自己と他者の理解が深まり、両者の間にポジティブ(肯定的・積極的)な行動変容が見られるようになる。

 聞き手は判断、評価を差しはさまず、あらゆる感覚を集中して相手の言うことに耳を傾ける。相手は、自由で安心でき る他者との関係を意識したとき初めて、肯定的で積極的な自己を意識し、安らぎと安定感を得ることができる。そのとき、 人と人との「間」に癒しが生起するのだ。

 『サインズ・オブ・ザ・タイムズ』 平山正美 1997年 6月号



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